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side ソヌ
ソヌの目の前には、ベッドの中でぐっすり眠るハジンがいた。
あれから、ハジンを家に送り届けようとしたが、スタッフの誰も知らないらしく、仕方なくソヌの自宅へ連れてきた。
ソヌは、ベッドに腰かけハジンを見つめる。
"覚えてないくせに――"
そう言ったハジンの瞳から、視線を逸らすことができなかった。
思えば、ハジンは出会ったそのときから、不思議な瞳でソヌを見つめていた。
とても悲しそうに、寂しそうに、でも、愛おしそうに。
今までその理由が分からなかったが、今日やっと分かった。
ハジンの想い人と、ソヌが似ているのだろう。だから、ソヌにその人を重ねて見ているのだ。
同じ人物だとさえ錯覚しているようだった。
ソヌは、ハジンの頬にそっと触れた。
先ほどまであった涙の跡も、今はもう引いていた。
ハジンの想い人とは、どんな人なんだろうか…?
ハジンを見る限り、とても愛しい人だということだけは分かる。
ソヌは、そんなことを考えたが、自身には関係ないことだと触れた手をすぐに引いた。
ソヌは、そっと立ち上がり、布団をハジンの肩までかけ直してから静かに寝室を出た。
その日、ソヌは夢を見た。
ソヌは顔に仮面をつけ、ソヌではなく"ソ皇子様"と呼ばれていた。
そして、誰かを"私の人"と呼んでいた。
目が覚めると、ソヌの頬には涙が伝っていた。
"私の人"と呼ばれていたその人のことを知っているような、会ったことがあるような気がしたが、思い出すことはできなかった。
思い出すことはできなかったが、"ソ皇子様"と呼ばれていた彼にとって、とても大切な人のような気がした。
「誰だ…?」
ソヌの呟きに答えてくれる人は、もちろんいない。
ソヌの声は、広いリビングに空しく響いただけだった。
ソヌは、涙を拭いながら寝ていたソファから立ち上がった。
時計に視線をやると、そろそろ7時になろうとしていた。
ハジンは起きているだろうか。
ソヌは深く息を吐いてから、ハジンが寝ている寝室へと足を進めた。
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