麗~after story~ ④


×××××


side ソヌ



ソヌの目の前には、ベッドの中でぐっすり眠るハジンがいた。


あれから、ハジンを家に送り届けようとしたが、スタッフの誰も知らないらしく、仕方なくソヌの自宅へ連れてきた。


ソヌは、ベッドに腰かけハジンを見つめる。


"覚えてないくせに――"


そう言ったハジンの瞳から、視線を逸らすことができなかった。


思えば、ハジンは出会ったそのときから、不思議な瞳でソヌを見つめていた。

とても悲しそうに、寂しそうに、でも、愛おしそうに。


今までその理由が分からなかったが、今日やっと分かった。

ハジンの想い人と、ソヌが似ているのだろう。だから、ソヌにその人を重ねて見ているのだ。

同じ人物だとさえ錯覚しているようだった。


ソヌは、ハジンの頬にそっと触れた。

先ほどまであった涙の跡も、今はもう引いていた。


ハジンの想い人とは、どんな人なんだろうか…?

ハジンを見る限り、とても愛しい人だということだけは分かる。


ソヌは、そんなことを考えたが、自身には関係ないことだと触れた手をすぐに引いた。


ソヌは、そっと立ち上がり、布団をハジンの肩までかけ直してから静かに寝室を出た。




その日、ソヌは夢を見た。


ソヌは顔に仮面をつけ、ソヌではなく"ソ皇子様"と呼ばれていた。

そして、誰かを"私の人"と呼んでいた。



目が覚めると、ソヌの頬には涙が伝っていた。


"私の人"と呼ばれていたその人のことを知っているような、会ったことがあるような気がしたが、思い出すことはできなかった。

思い出すことはできなかったが、"ソ皇子様"と呼ばれていた彼にとって、とても大切な人のような気がした。


「誰だ…?」

ソヌの呟きに答えてくれる人は、もちろんいない。

ソヌの声は、広いリビングに空しく響いただけだった。


ソヌは、涙を拭いながら寝ていたソファから立ち上がった。

時計に視線をやると、そろそろ7時になろうとしていた。


ハジンは起きているだろうか。


ソヌは深く息を吐いてから、ハジンが寝ている寝室へと足を進めた。



×××××


⬇️ポチッとお願いします。

更新の励みになります(*^^*)