麗~after story~ ⑦


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side ソヌ



ソヌは、手に持っていた資料から目を離し、バックミラーに視線を移した。

そこには、いつまでもソヌの車を見つめているハジンがいた。


少し冷たくし過ぎただろうか…?


ハジンは、想い人とソヌを混同している。

それゆえ、態度をはっきりさせ、ハジンとは距離をとった方がお互いのためだと思った。


そう、思ったが――。


車中でのハジンを思い返す。


何か言いたげで、ソヌに声を掛けようかどうしようかと何度も迷っている様子だった。

そんなハジンに気付きながらも、ソヌは知らないふりをしていた。


やはり、あからさますぎたかもしれない。

他の社員と同じように接しなくては…。

あからさまに避けていては、それこそ意識しているようだ。


ソヌは、そう思い直し資料に視線を戻したが、 内容は頭の中に入ってこなかった。


ソヌは目を瞑り、目頭を指で押さえる。


そんなソヌに気づいたのか、運転していた秘書が鏡越しに

「社長、お疲れですか?」

と聞いてきた。

「あぁ。最近、なんだか眠りが浅くて…」


あの不思議な夢を見てから、ソヌは、毎日同じ夢を見るようになっていた。

そして、目が覚めると必ず泣いていた。


夢の中で仮面をつけている男はソヌなのか。

"私の人"と呼ばれていた、その人は誰なのか。


何度も夢は見ているのに、分からないままだ。



「無理しすぎなんですよ。ほどほどにして下さい。心配するこっちの身にもなって下さい」

秘書は、口を尖らせる。

「どなたか、体調管理してくれる方を見つけたらどうですか?」

と小言まで言われ、余計なお世話だと突っ返した。



ソヌは、その日も夢を見た。


だが、その日の夢は、いつもの夢とは違っていた。


"ソ皇子様"と呼ばれていた彼は、仮面を外していた。

仮面の下には大きな傷があり、"私の人"と呼ばれていた彼女がその傷を隠すようにお化粧をしていた。


彼は、その彼女に決して手放さない、と言っていた。


抱き締め、口づけをしている場面も見た。


彼女は、誰だ。

彼女の名は――。


ソヌは、ハッと目が覚めた。

いつものように涙が頬を伝い、瞳に溜まっていた涙を拭った。





「――ヘ・ス……」


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