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「え?男性にお礼の贈り物?」
休憩中、ハジンはソヒョンにそれとなく、年上男性にお礼として何をあげたらいいか聞いてみた。
彼氏でもなく、近しい上司というわけでもなく、この表現しづらい関係性の場合、お礼に何をするべきかハジンは考えあぐねていた。
「誰にあげるかにもよると思うけど…」
そう言って、ソヒョンはニヤリと笑う。
「誰なの?誰に渡すの??」
「それは――」
ハジンが口ごもると、ソヒョンはすぐに察して、言いたくないならいいけど、と引く。
「まぁ、でも良かった。あの最低野郎と別れてから、全然男の影がなかったハジンにもやっとそういう人ができたんだから」
ソヒョンの言う"最低野郎"とは、もちろん、2年前に浮気され、借金を押しつけられて別れた元カレのことだ。
当時は、ソヒョンに愚痴を聞いてもらったり慰めてもらったり、いろいろ助けられた。
ソヌとの関係を勘違いしているソヒョンに、ハジンは、そんな関係じゃない、と言おうとしたが、ソヒョンが手を口元に持ってきてストップするように制する。
「本当にそんなんじゃないのに…」
ハジンが呟いて否定するが、ソヒョンは尚も
「いいのいいの。分かってるから」
と、笑顔で頷いていた。
そして、いたずらっぽく、
「――で、相手は誰なの?」
と聞いてくるソヒョンに、ハジンは、もう、と笑った。
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結局、お礼に何をするべきか答えを出せないまま、日にちだけが過ぎていた。
そんなある日、ハジンは店長に呼び出された。
「講師、ですか?」
「今年入社した新入社員に向けて、30分ほどでいいから話をしてほしいの」
そう言われ、ハジンは、そういえばもうそんな季節だな、と思い出す。
「あなたは、販売成績もいいし、資格もたくさんもっているでしょ?だから、その秘訣や資格の勉強方法や、資格を持っていて活かせたことなんかを話してくれればいいの」
持っていた資格を一番に活かせたとき、と言われ、一番に思い出すのは高麗時代にいたときだ。
石鹸をつくったときも、お茶を入れられるようになったときも。
――あの人にお化粧をしたときも。
現代で学んだことが、すべて役に立った。
だが、もちろん、そんなこと言えるわけがない。
ハジンは、心の中で自嘲ぎみに笑った。
「どう?やってくれる?」
店長が、再度伺ってくる。
できるかどうかという不安はあるが、期待に応えたい、という思いもあり、ハジンは悩みながらも、
「分かりました。やってみます」
と、返事をした。
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