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side ソヌ
待ち合わせの時間より15分ほどを早く着いたソヌは、博物館の前でハジンを待っていた。
ガラスに反射して映った自身を見て身だしなみを整えながら、先日のことを思い出す。
どうして、ハジンを誘ってしまったのだろう。
どうして、一緒に行くか、などと言ってしまったのだろう。
あまりにも切実そうにポスターを見ていたから。
一度断ったときの顔が、とても寂しそうに見えたから。
いろいろな理由を探したが、結局は、ただ単にハジンに会いたかっただけかもしれない。
先日の新入社員研修でのこともそうだ。
本当は研修を見学するつもりはなかった。
日程も知っていたし、ハジンが講師として参加することも知っていた。
だが、他の社員と同じように接すると決めた手前、気に止めないよう努めていた。
しかし、たまたま会議室の前の廊下を通りかかった時、とても緊張しているハジンを目にして、ソヌはいてもたってもいられず、気づいたらコーヒーショップへ向かっていた。
講義が始まる前に戻らなくては、と次第に小走りになり、戻ってきた時にハジンがまだ椅子に座っていることを確認すると安心した。
ハジンに向かって歩いている時も、隣に座る時も、自身の胸が高鳴っていることに気づいていた。
顔に傷がある"彼"が、私の人と呼んでいた"彼女"、ヘ・ス。
夢は、日を追うごとに鮮明になっていき、最近では、夢の中でのことを目が覚めてからも細かく憶えていることが多くなってきた。
そして、鮮明になればなるほど、夢の中にでてくるヘ・スという少女とハジンが似ているような気がして仕方がなかった。
同じ人物な訳がないと思いつつも、ハジンを見ると夢の中の少女、ヘ・スと重なって見えてしまうときもあった。
これでは、好きな人とソヌを重ねて見ているハジンのことを責められない。
ソヌは、自嘲するように笑った。
ふと目の前の交差点に目を向けると、ハジンがこちらへ歩いてくるのが見えた。
姿を見ただけで、ソヌの心は弾む。
交差点の向こうにいるハジンがソヌの存在に気がついたのか、少し微笑んで駆け足で近づいてくる。
もう自分の気持ちに嘘をつくことはできない――。
駆け寄ってくるハジンを見つめながら、ソヌはそう思った。
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